僕の仕事の殆どは海外作品の日本撮影で純国産の撮影はあまりない。
しかしながらその数少ない純国産撮影の中で目にしたり耳にしたりする暴力の話は少なくはない。日本映画撮影の中で暴力が起こる事はかなり多いと日本のフィルムメーカーは自覚しなければならない。僕が見聞きする暴力の殆どが立場が上の人から下の人に対するものが殆どで、実際隣にいた人物が「あいつ蹴ったら仕事辞めちゃいました」などと恥ずかしげも無く口にしていたのを覚えている。事実その人物には暴力を振るったという自覚は薄く、「教育してやった」という愚かで勘違い甚だしい考えが見受けられた。
時には「武闘派」という言葉を耳にした事もある。この言葉は暴力を当たり前のように振るう人物を指しており、そう呼ばれている本人もまんざらな態度を示している事もある。
これらの人物達に共通して言える事は彼らには言葉で相手を諭す能力が無いの一点で、昔ながらの職人気質などと高尚なものでは無い。言葉で説明、説得できないという事はその人本人が知識がない事を露呈しているようなものであり、知識不足を隠す為に力によって相手をねじ伏せていると自覚しなければならない。そしてその行いを善しとしている考えを改めなくてはならない。もっと芸術大学や映像専門大学の地位が確立されていて撮影というものも一つの学問なのだという認識が広まっていれば現在のような状況にはなっていなかったと思う。
とは言え暴力を振るう皆が愉快犯の如くその愚挙を行っているわけでは無い。根底には劣悪とも言える労働環境に起因するものが多く、積み重なったストレスがちょっとした部下のミスにより暴発し起こってしまうという事実もある。だからと言って許される行為では無いが。自分の下で働く者がミスをするという事は自分の指示の仕方、コミュニケーションのあり方に問題があると自戒出来る人材がもっと増えなくてはならないし、そうなる環境を意識して作り出さなければならない。暴力を振るう事により自分の存在を示したり相手を威圧する事に自尊心が芽生えると最早チンピラと変わらない存在になり得てしまう。
早くこの恥ずかしい風習が消え去ってほしいものだ、と同時に自分がそうならないよう気を付けなければ。
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